12.小町山自然遊歩道便り

●小町山自然遊歩道の今(2024年3月15日 現在)をお知らせします●

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☆小町山自然遊歩道便り

 このコーナーでは、小町山自然遊歩道の今をお知らせしています。

 前回の3月1日の更新で、2月28日に、もうフクジュソウが咲いたのでその写真も掲載しました。
 しかし、今の時期は、いつ雪が降るかもわからず、せっかく花開いたフクジュソウの上に、雪が積もってしまいました。おそらく、このような天気の変化では、あまりフクジュソウも驚かず、翌日も元気に花開いていました。
 前回も書きましたが、なぜ、こんな季節にフクジュソウは花開くのかといいますと、早春のまだ花の少ない時期に咲けば、競争相手は極端に少ないはずです。たしかに、いつ雪が降るかもしれない気候の厳しさはありますが、太陽の光が射しているときだけ花開き、少しでも曇ると花を閉じ、気候の変化に対応しています。さらに、この花はパラボラアンテナのような光を集めやすい形をしており、温度計で測ってみても花びらの中は暖かいようです。
 そして、不思議なことに、虫媒花のほとんどは花の中に蜜を作ることで昆虫たちに来てもらい花粉を運んでもらうのですが、フクジュソウはほとんど蜜を作れません。では、なぜ昆虫が来てくれるのかといいますと、この花の暖かさではないかと言われているのです。もちろん、この時期は昆虫だって寒いはずです。だからこそ、ときどきフクジュソウの花を訪れ、体を温めているのかもしれません。さらに、この暖かさが種子を成熟させるためにも役立っています。ある方が実験したそうですが、フクジュソウを2つのグループに分け、確実に受粉したことを確認した後で、1つのグループはそのまま花びらを残し、もう1つのグループは花びらをすべて切り落としました。そして種子が成熟するまで観察を続けましたが、花びらがあった方は70%が種子をつくったそうですが、花びらを切り落とされた方は50%しか種子をつくれなかったといいます。ということは、花が太陽の光を集めて昆虫を引き寄せるだけではなく、自分の種子をつくりだすためにも役立っているということになります。そして、この観察でもわかることですが、自家受粉をしないように、メシベが先に成熟し、他の花のオシベの花粉を受粉するようにできていますから、これだって優秀な子孫を残すためにしていることの1つです。
 そして、早春に他に先駆けて花を咲かせ、子孫を残し、自らが生きる養分を十分に蓄え、2〜3ヶ月でさっさと地上部を枯らし、冬眠に入ってしまいます。そうすれば、他の植物たちが葉を大きく茂らせるころに無益な競争をすることもありませんし、無駄なエネルギーを使うこともありませんから、フクジュソウの生き方は省エネそのものの生き方でもあります。
 このようにフクジュソウの生き方を見てみると、フクジュソウの生き方にも個性があり、見習うべきこともたくさんあります。フクジュソウは、その名の通り、人と争うことを好まない福寿の精神で生きているようです。

 (今回の写真は、3月14〜15日に撮影しました。)


小町山自然遊歩道の入口付近

ロックガーデンのシャクナゲ

アズマシャクナゲの花芽

雪のなかのフクジュソウ

雪のなかのフクジュソウ

フクジュソウ

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※小さな花々も大切に!

 草木にも人間と同じ生命があります。一粒のタネが地面に落ち、やがて季節が来て芽生え、成長し、花開き、実を結び、そしてついには枯れて土に戻っていきます。このすばらしい自然の環を大切にしなければならないと思います。まさに人をいたわると同じ気持ちで……。
 そして、植物と仲良くなるには、先ず植物の名前を覚えることです。名前は単なる符牒にすぎないという人もおりますが、その背景には、必ず人間との深い関わり合いがあり、結構面白いものです。ある文人は、「植物名は、短い形式の文学だ」といいましたが、私も全くその通りだと思います。

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☆小町山自然遊歩道について

 小町山自然遊歩道は、昭和59年より作りはじめ、今現在も仕事の合間をみて作業を続けています。植裁の中心は、なんといっても石楠花(シャクナゲ)で、日本ツツジ・シャクナゲ協会を初めとする全国各地の愛好者による献木が多く、日本や世界のシャクナゲなど370種類、6,000本が植えられています。そして、300種類をこす山野草も、なるべく自然のままに植付けられており、いつでも楽しめます。
 ここには、まだ非公開ですが、私が世界各地より収集したシャクナゲの原種を植え込んだ「The Rhododendrons Species Section」があり、この充実にもつとめています。

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